今回は、サバゲー関係から少し離れて、実銃に関する雑学をご案内します。サバゲーマーの方々でも、実銃に関しては知っているようで案外と正しく理解されていない知識があるのではないでしょうか?そこで今回は「口径」と、よく使用されている弾薬についてご説明します。
ハンドガンやライフルなどでよく聞く「口径」とは?
出典:「wikipedia」
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銃器において「口径」とは、簡単に言うとバレル(銃身)に空けられた穴の直径を指します。しかし、案外皆さんが見落とされていることがあります。じつは、バレルの口径には2つの大きさがあるということです。
上の図を見ていただければ解りますが、バレルにはライフリングが刻まれており、ライフリングには、山径(ボアダイヤメーター)と谷径(グループダイヤメーター)という2つの径が存在します。そこで口径を数字で表すときは、一般的に「ボアダイヤメーター」の直径で表します。
「357マグナム」ならボアダイヤが0.357インチ、「.45ACP」なら0.45インチという具合です。
HK VP70
出典:「wikipedia」
このグループダイヤメーターが深すぎると、発射時の燃焼ガスのロスが多く、銃口初速が低下します。しかし、敢えてこの発射ガスのロスを利用しているハンドガンがあります。それは、「HK VP70」とS&WのKフレームを使用したマグナムリバルバーです。
VP70は「9ミリパラベラム」という強壮弾を使っているので、本来なら「ショートリコイル」或いは「ディレードブローバック」という作動方式でないとバレル内のガス圧が高い状態でスライドが開放されて、射手に高温のガスが吹き掛かりダメージを与えてしまいます。
しかし、VP70は敢えてライフリングの谷を深くして燃焼ガスを前方に逃し、バレル内のガス圧を下げることによって、シンプルブローバックで作動させています。そのため、VP70は「9ミリパラベラム」を使いながらも、発射された弾丸は1クラス下の「380ACP」並の威力になっています。
S&W M19(Kフレーム)
出典:「wikipedia」
S&WのKフレームは元来38スペシャル用の強度しかないので、357Magを撃つ続けるとフレームにダメージが蓄積されて、すぐにガタがきます。
そのため、Kフレームを使用した「M19」「M66」「M13」「M65」といった357Magモデルはボアダイヤをワザとゆるゆるにし、更にはライフリングのグループダイヤを深くしてガス圧を逃し、フレームへのダメージを軽減しています。
S&WのKフレームのバレルより、コルトパイソンのバレルの精度が良いとされるのは、パイソンのバレルがキッチリと「.357インチ」で作られているからなのです。
カートリッジの名前と口径の関係とは?
「.40S&W」(右から3番目)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
では、今度はカートリッジ(弾薬)の名前についてご説明します。実はカートリッジの呼び名は決まった命名方法はないのです。ですから開発者が好きな名前を付ければ、それがそのカートリッジの呼称になります。
分かりやすい例が「10ミリオート」と「.40S&W」の関係です。この2種類のカートリッジは、同じ10ミリ口径なのですが、片やミリ表示、もう一方はインチ表示で命名されています。
もっとややこしいのが、ケース(薬莢)外径をカートリッジ名にした「38スペシャル」です。この銃弾の口径は「357Mag」と同じなのですが、357Magがボアダイヤを表示しているのに対して、「38スペシャル」はケース外径で表示されています。そのため、357Magの銃から「38スペシャル」を撃つことができます。
ただ、開発者が好きに名称を付けてもいいと言っても、基本的にイギリスの除くヨーロッパでは「メートル表示」でアメリカでは「インチ表示」で表されることが一般的です。
ハンドガン&SMGでメジャーな口径と弾薬
ここでは一般的?によく知られているハンドガンの口径と弾薬をご紹介します。
「9ミリパラベラム」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現在、世界中のミリタリー&ポリス関係で一番普及しているカートリッジ(弾薬)です。
「グロック」「SIG/SAUER」「H&K」「スタームルガー」「FNハースタル」「ベレッタ」等、主だったハンドガンメーカーに採用されています。開発は1902年、ドイツの「ルガーP08」用のカートリッジとして開発され、現在でもNATO諸国、アメリカ軍などの世界中の政府機関や軍隊、警察で使われています。
「9ミリパラベラム」を採用しているハンドガン&SMG
H&K MP5
ルガーP08
SIG/SAUER P226E2
U.S.M9ピストル
「45ACP」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1911年にアメリカ制式ハンドガンに選ばれた「コルトM1911&M1911A1」と共に開発されたカートリッジです。開発者は天才銃器設計家として名高い「ジョン・ブローニング」です。
アメリカ軍はこのカートリッジでWW1、WW2を戦い、1985年に「9ミリパラベラム」に制式採用の座を譲るまで、70年以上に渡って軍用カートリッジとして使われ続けました。しかし、海兵隊や特殊部隊の一部は今でも「45ACP」を使い続けており、アメリカのガンナッツたちからは信仰にも近い信頼を受けています。
その理由は、人間を一撃で行動不能にできる「マンストッピングパワー」にあると言われています。「9ミリパラベラム」が音速を超える360m/s以上といった初速を誇るのに対して、「45ACP」は初速が231m/sとはるかに低い数値です。
しかし、人体に与える衝撃は、115gr(グレインと読みます)の9ミリ弾頭よりも、230grの重量弾頭である「45ACP」のほうが効果的であると信じられており、アメリカでは今でも絶大な人気を誇っています。
コルトM45A1
クライタック クリスベクター
モーゼルKar98k
上記のカートリッジ以外にも「357Mag」「.40S&W」「.50A.E.弾」「.500S&W」といった著名なハンドガンカートリッジがあるのですが、スペースの関係でご紹介できないのが残念です。
また、ライフルカートリッジにおいても、「8ミリモーゼル」「30-06スプリングフィールド」などの小銃弾や、インターミディエイト弾の走りとなった「7.92×33弾」と、それを素にして開発されAK47の口径となった旧ソ連の「7.62×33弾」の話も軍事史的に面白い話題があります。
さらに、アメリカのゴリ押しと身勝手さで西側諸国のアサルトライフル開発を10年遅らせる原因となった「308ウィンチェスター」(7.62ミリNATO弾)やその後M16用弾薬として採用され、イギリス陸軍を激怒させた小口径高速計量弾「.223レミントン」(5.56ミリミリタリーボール)などのエピソードもお伝えできなかったのが残念です。
もしご要望があれば、これらの弾薬の紹介もいずれ行いたいと思います。
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